相場と情勢


by f1wrxgt
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大前研一  ニュースの視点

人民元がドルに対して上昇
一時1ドル7.8180元
昨年7月の切り上げ後の最高値を更新
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●人民元が上昇すると、中国という国はどこへ向かうのか?

14日、上海外国為替市場の人民元相場は、ドルに対し一時、1ドル=7.8180元まで
上昇しました。
これによって、昨年7月の切り上げ後の最高値を更新しました。

「人民元改革を急ぐべき」という米ポールソン財務長官の発言の影響を受けて、人民元買い、
ドル売りに動いたためとも言われています。

実際にはどれほどポールソン財務長官の発言による影響があったのかは定かではありま
せんが、アメリカの意向としては、いち早く人民元改革を推進したいというところでしょう。

ご存知の通り、人民元は昨年7月に対ドルで約2%の切り上げを実施し、同時に固定相場
制から前日比0.3%までの変動とする管理フロート制へ移行しました。

※「中国為替相場の推移」チャートを見る
→ http://vil.forcast.jp/c/afv4ac6M6Rcwtjaf

当時は2%ほどの切り上げでは全く影響がない水準と思っていましたが、こうして1年経っ
てみると、昨年7月の切り上げ前の1ドル当たりで約8.3元から12月16日時点の1ドル=
7.8374元で、約0.5元 元高が進んでいます。

もし今の状態のまま完全なフロート制に移行すれば、現状から約2倍の価格である、1ドル
4元、5元という水準に達するのは間違いないと思います。

かつて日本は、1ドル360円から80円までという約4倍の水準の変化を体験しましたが、
当時の日本の状況と比較してみて、そして今の中国の輸出競争力からすれば、現状から
2倍ほど価格が上昇するのは、当然のことと言えるでしょう。

そして、もし元の価格が2倍になれば、輸出を柱としている今の中国企業は軒並み競争力を
失うことになるでしょう。
逆に、元の価格上昇は「元の購買力が強くなること」を意味しますから、輸入には有利に
働きます。

今の中国の経営者を見ていると、そういう状況になったら、スパッと輸出から輸入に切り替え
て、簡単に儲かる事業へ転換してしまう可能性が高いのではないかと思います。
そうなると、中国という国は工業資本が根付かず、商業資本の国として、消費中心の国に
なっていく可能性もあるのではないかと私は見ています。

●アメリカの意向をいなしつつ、ゆっくりとゆっくりと人民元の切り上げを

このような中国の現状を考えると、私は中国の人民元の早期切り上げには反対なのです。

米ポールソン財務長官に何といわれようと、アメリカの意向を抑えつつ、時間をかけてゆっくり
と元の切り上げを行うべきだと思います。

米国の意向どおり、早期の人民元切り上げという意味で完全なフロート制に移行した場合に
は、少なくとも1年に10%ほど変動していくでしょう。
すると、先ほど見たように輸出中心の国際的な競争力を失ってしまいます。

この段階でかつての日本企業のように、それを補うべく生産力を上げるような経営努力で
乗り切る道も残されています。
しかし、今の中国の経営者はそのような経営努力はしないように私は感じます。
また、現状では、そのような経営力そのものが不足していると思います。

人民元の早期切り上げによって、せっかく発展してきた工業資本国としての中国を崩壊させ
てしまっても、世界の国々にとっても何も良いことはありません。

他の地域を見渡して見ても、「中国がダメなら、じゃあベトナムで」という訳には行かないで
しょう。今の中国の代役はどこにも務まらないだろうと私は思っています。

さらに、為替の安定・経済の安定という意味でも、日本にとっては人民元の安定が重要だと
思います。

もしフロート制に移行して、1ドル4元、5元というくらいまで元の価格が上昇してきたら、今度
は逆に「元を売る」という動きが市場に出てくるでしょう。
「実は、中国にはそこまで実力がないのでは?」というようなまことしやかな噂を流し、元を
売り浴びせる人たちが出現するのです。

こうなると、まるで途上国の通貨のように、人民元は安定性を失い、乱高下することになって
くるでしょう。
日本はもはや中国からの影響を免れない立場ですから、このように元が激しく乱高下してし
まうと、日本経済も影響を受けて安定性を失ってしまうのではないかと私は思います。

人民元の切り上げの問題について、米中貿易の経済問題をにらんだ米国の意向もよく理解
できます。
しかし、元を早期に切り上げた場合、中国という国がどういう方向へ進んでいくのか?
そして、それが世界にどのような影響をもたらすのか? ということをしっかりと考えている
ことが大前提ではないでしょうか。

中国人経営者の実力、中国の国際的な影響力など、現状についての正しい情報収集と
考察の元、仮説を立てて予測するべきでしょう。

そういう点まで考えると、アメリカ側からの圧力もあっても、ゆっくりゆっくりと元を切り上げて
いくという方針を貫いてもらいたいと思います。
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by f1wrxgt | 2006-12-22 08:57